・冒険の舞台・

冒険の舞台となるレジェンディア大陸は、下記の図のような姿をしています。 



 現在のところ大きく4つの地方に分類する事ができ、国家間は互いに友好的な姿勢を取っています。もっともそれは、相次ぐ魔王の復活や魔王教団の暗躍ゆえに、他国と紛争を起こしている場合ではないという認識ゆえでもあるのですが……


---4つの地方---

・ラヴィニア立憲君主王国・

 レジェンディア大陸で最も古い歴史を持つ王国です。
 その長い歴史に培われ、大陸で唯一の立憲君主制を取り入れた国家であり、気候の温暖さもあいまって食料や資源は豊富。その影響もあって、非常に治安も良く、芸術や学術などの文化も他国より一歩進んだものを持っています。とりわけ、ドワーフ族との交流によってもたらされた技術で作られる陶芸品やガラス細工などは、小国連合やセンゴクにおいて高値で取引される光景をよく目にします。
 現在は女王ソフィアレーテの指導の下、相次いで大陸中で復活する魔王に対抗すべく、防衛の策が巡らされています。もともと民族的に争いを好まない国家であり、今のところ比較的平和な情勢が保たれている事もあって、能動的に魔王を討伐しに行こうとする動きは活発ではありません。この姿勢は平和を享受している民には受け入れられているものの、一部の貴族や他国からは、弱腰、日和見な態度と思われている部分もあり、特に帝国とは軍事に対する思想の違いもあって、水面下で緊張が高まりつつあります。
 それでもなおこの王国が強い求心力を持つのは、資源や文化の面で秀でているのみならず、この大陸全土で信仰されている、かつて魔王神を撃退したアンドレイア神を祭る総本山、大聖堂がこの国に存在している事が大きいと言えます。
 亜人の存在比率としては、文化的交流が盛んなドワーフが多めです。

 主要都市:ラヴィニア王都  国境都市シュタインヴァーゼ  学園都市アカデミウス  境界都市カランガラン  鉱山村シュワルツブルク

・バルハリアント帝国・

 皇帝ガイゼリウス・フォン・バルハリアン1世が一代にして築き上げた、大陸北西に位置する新興の帝国です。
 かつては巨大な魔王教団が事実上支配していた土地であり、現皇帝が冒険者として彼らを壊滅させた後、民から推されて即位、帝国としての形を整えたという経緯の下に作られた国家です。そのため多くの民衆は、皇帝に対して熱狂的な信頼を注いでいます。
 しかし一方で、急進的に建造された国家であるため整備が行き届いていない部分もあり、とりわけラヴィニア王国と領土を接する東方面では、支配を好まない亜人種との軋轢や山賊の被害が多発しており、悩みの種となっています。
 好戦的な軍事国家というわけではないにせよ、皇帝がもともと一介の剣士の出であった事に起因するものなのか、優秀な武人は重用され、逆に文官や商人は軽んじられる傾向が国家全体の風潮として存在します。それを象徴する存在が"千騎将(サウザンド・ナイト)"でしょう。「一人で千人を相手にできる強者」という意味で名づけられたこの称号は、帝国の武人にとって最高の栄誉とされており、この称号を持つというだけで大臣にも匹敵するほどの発言力を認められるとも言われています。
 現在、皇帝は、大陸中で復活した魔王を殲滅する事を民に誓い、これを実践するため軍備の拡張と、優秀な冒険者の召抱えに執心しています。
 なお、亜人の存在比率としては、獣人が多めです。彼らは山岳や森林も物ともしない優秀な斥候となりますし――何より、雇い入れる単価が安くて済むという意味で、帝国の軍人には重宝されているのです。

 主要都市:帝都バルハリア

・小国連合・

 大陸南西部に位置する小さな国々が身を寄せ合ってできた連合です。
 元々は小さな国々が個々に動いていた状態であり、連合としての形を成してきたのは、ここ2〜30年ほどの事です。ようやく各国が連携して政治的問題の解決に当たれるようになり始めた段階であり、依然として国々それぞれの状態を取り出してみれば、ラヴィニアや帝国には遠く及ばない国力しか持っていません。多くの国では、民の7割以上は食糧生産に従事しており、麦やイモ類を作ったり、漁をしたりして細々と日々を暮らしている状態です。
 そのような状況であるため治安もあまり良くなく、水面下で魔王教団を活動させる温床を作っている傾向が見られます。特に、大陸中でその名を知らぬ者はいないとまで言われる賞金首である"屍人使い"ワズロックスの被害は甚大であり、彼が作ったアンデッドモンスターを討伐するために帝国の軍が介入した事も一度ではありません。
 現在、連合内の結束を強め、あらゆる物事に一致協力して取り組める体勢を目指して、シュトラスヴァルト公国レオナール王が連邦制への移行を各国へ呼びかけています。しかし、連邦制移行後の代表者をどうするかといった諸問題が山積しており、なかなか状況は前進していないようです。

 主要都市:シュトラスヴァルト公都  アマジュナス王都

・センゴク・

 大陸の東に離れ小島として存在する、弓形の島国です。
 今なお内戦状態にあり、ダイミョーと呼ばれる各地方の領主たちが覇権を賭けてしのぎを削る状態にありますが、最有力のダイミョーであるノブナガが国内を統一するのは時間の問題と言われており、国外からは彼が事実上のセンゴクの最高指導者とみなされています。
 数年前より、突如国内の東方に現れた魔王タイラント・マサカドの脅威に対処すべく苦慮していますが、永らく内戦が続いていた国家である事もあり、魔王が堂々と降臨しているにしては、混乱はさほどありません。
 大陸の他の国々に比べると、気候としては雨量が多く、季節ごとの気候の差が大きくなっています。また、麦ではなく米が主食とされているのも特徴と言えましょう。
 大陸との玄関口の町デジマでは、大陸の人間たちには物珍しく映る武具や芸術品が数限りないほど取り揃えられており、訪れた者の目を楽しませるのみならず、貿易・経済の重要拠点となっています。
 国家全体で見た亜人の存在比率としては、意外な事にエルフが数多く見られます。木々の彩りが鮮やかで、また街の作りも藁葺き・板葺きが多く見られるような自然と一体となった営みが、彼らの生活様式と適合するのでしょう。

 主要都市:交易都市デジマ


---冒険のバックボーン---

・冒険者ギルド・

 このレジェンディアで冒険者家業を営む者は決して多くありませんが、ひとつの街に数パーティの冒険者はたいてい存在し、さまざまな厄介事の解決や行商の用心棒、モンスター討伐などの仕事を請け負っています。
 これらの仕事を依頼する者にとっては依頼の窓口であり、請け負う冒険者たちにとっては仕事探しの場となる仲介斡旋所。それが冒険者ギルドです。
 通常、ひとつの街に1個の冒険者ギルドが存在し(大都市の場合は複数存在するケースもあります)、ここにさまざまな依頼が集約されます。
 なお、ギルドで仕事を請け負うためには、当該の街のギルドへの登録、もしくは他のギルドから斡旋を受けた紹介状などが必要になります。これは、身元の保証のない者も多々存在する冒険者という身分の者たちが、万一背信行為を働いたりした場合の責任追及先をはっきりさせておくという意味合いが強いようです。
 また、冒険者のうち何割かは、定住する家を持たない、あるいは家に帰れない事情を持った者もいます。そういった者たちは、冒険者としての仕事がなく暇な時、ギルドの内勤の雑用を手伝う条件で住み込ませてもらっているケースもあります。

・聖アンドレイア教・

 かつて邪悪なる魔王神を退けた、光明神アンドレイアを奉じる教団です。
 アンドレイアの欠片を受け継いだ勇者を見出して導く事、そして魔王に従う者を討つ事の2つを功徳としています。魔王教団と対をなす存在と言っても過言ではなく、少なくとも教団に属する人間の大半は、魔王教団を不倶戴天の敵と認識しています。
 司祭への道を歩もうとする者は、勇者に従者として仕え、共に戦う事が最良の修行とされております。このため、のんびりと冒険者などをやっていた勇者の元に"押しかけ従者"としてやってくる人物もしばしばおり、ややもすると煙たがられている部分もあります。
 位の高い司祭になると、勇者を導き育てるという教義の都合上、魔王教団やモンスターの殲滅を依頼してくる事もあります。必要な助力は惜しみませんが、必要以上に甘やかす事はせず、適切な試練を与える事を好む人物が多い傾向があります。

・学園都市アカデミウス・

 優秀な人材の育成を目的として、ラヴィニア立憲君主国の南方に設置された学問の園。
 アカデミアと呼ばれるその場所は、この大陸の学問……語学、数学、歴史、魔術、初歩的な機械技術、果ては武術に至るまで、ありとあらゆる教育を受けられる施設が揃っています。
 長い歴史と豊かな文化を持つラヴィニアだからこそ実現できた施設と言えますが、その設立に際しては、小国連合のうち何国かの出資もありました。それゆえ、設立に協力した国々を将来しょって立つであろうエリート候補生が少なからず留学してきてもいます。
 基本的には、貴族や学者、宮廷魔術師などといった高位の優秀な知的労働者を生み出すための施設と解釈されていますが、優秀でさえあれば出身を問わず、奨学金を与えるなどして広く学徒を募っているというのが実態です。
 武術や魔術を教えている施設でもあるため、ここで学んだ技術を活かそうとしてドロップアウトした者が冒険者になる事や、あるいは学徒の身分である者が、片手間に冒険者の真似事をする事もあるようです。


---多様な亜人---

 レジェンディアにおいて最も個体数の多い種族は人間です。が、それ以外にもさまざまな"亜人族"が住んでいます。
 彼らの多くは、ありのままの自分たちに適合する自然環境の中で暮らす事を好み、数十〜数百人程度の部族を作って暮らす事がほとんどです。以下、異種族の例を見ていきましょう。

・ドワーフ・

 レジェンディアでは最も個体数の多い亜人です。強靭な肉体を持つ種族ですが、人間よりひとまわり背が低く、顔つきも人間の目から見れば幼く映ります。男性、特に人間社会に進出している者は、他人から甘く見られないためにヒゲを豊かにたくわえ、その幼い顔つきを隠そうとする傾向にあります。
 山岳や洞窟での暮らしを好みますが、前述したように一部には人間の街で暮らす者もいます。彼らはもともと岩窟で暮らしていた種族だけあって、鉱石や宝石、そして固く乾いた土にもよく根づく特殊な作物に詳しく、それらの知識を求める人間には重用されているのです。また鍛冶や貴金属細工の技術もレジェンディアの人間より数段進んだものを持っており、大金を生み出す職人として崇められる者も存在します。

・リカント・

 ドワーフに次ぐ個体数の多さを誇る亜人です。総括して言えば"獣人"なのですが、個体ごとに形態は大きく異なります。耳と尾だけが獣らしく、後の部分は人間同様である者もいれば、単に獣を直立歩行させたような外見の者まで、実に多彩です。
 主に森に好んで住む種族ですが、治安が悪化した昨今のレジェンディアでは、安価な労働力として雇われ、人間社会に出てきている姿をよく見かけます。もともと狩猟や採集によって日々の糧を得るような生活を営んでいた種族だけあって、最低限の衣食住を提供するだけで雇われてしまう者が少なくないのです。
 なお、彼らと人間の混血児は稀に、普段は人間の姿をしているものの、一定の条件下でリカントの姿になってしまう者が生まれるとか……

・エルフ・

 深い森に好んで住む種族です。長い耳と緑の髪が特徴的な彼らは、大陸では滅多にその姿を見る事はなく、センゴクでやや多く見られます。
 彼らは人間の倍ほどの寿命を持っており、その頭脳には多くの英知を秘めていると言われていますが、実際に検証した人間はいません。検証しようにも、その手段がないと言うのが正しいでしょうか。
 その知をもって考えた結論であるのか、彼らは人間よりよほど聡明でありながら、文明社会を好まず、自然と共存した生活を好みます。深い森に木材の家を構え、最低限の食料と水だけを採取して生活している事がほとんどです。あまりにも食物を口にする光景が珍しい彼らは不死身なのかと言われる事もありますが、彼らの証言によれば、「我々の髪は、草葉と同じように、陽光や空気から養分を作れるのだ」との言葉もあったとか。
 そんな彼らですが、知と精神活動を重視するだけあって、高尚な芸術作品や高度な魔法には興味を示す事がしばしばあるようです。人間社会に出て来る変わり者はたいていそういった目的を持っており、センゴクでは茶道具ひとつのために一軍の軍師になった者すらいると言います。

・セイレーン・

 ほとんど姿を見る事もなくなった希少種族です。海辺に好んで住むと言われますが、真偽の程は定かではありません。
 彼女らは女性しか生まれない種族であり、絶滅を避けるため、常に伴侶となる男性を探しているのが常だとも言われています。その目的のためか、天使のような純白の翼――それは容姿を美しく飾り立てるためだけのものであり、飛ぶ力は無いようです――、美しい容貌、透き通るような声をみな持っていると伝承には伝えられています。
 彼女らのあまりに不自然な生態は、何らかの呪いによって発生したものではないか、と分析する者もいますが、事実は不明です。
 唯一言えるのは、彼女らに見初められた男は、一生涯をかけて窮屈な幸福を感じる事になるであろうという事でしょう。

・アガルマ・

 かつて大陸がまだ神話の時代だった頃、魔王神バキアによって生み出された魔の種族です。
 黒髪、病的に白い肌、そして赤い刺青のような全身の紋様という身体的特徴を持ち、その精神性は己の欲望に忠実です。
 このため多くのアガルマは、飢えと渇きを満たし楽しみを得るための悪行に走るケースが多く見られますが、まれに、欲望の方向性によっては、なんとか人間社会に溶け込めなくもない個体も存在します。
 知性は決して低くなく、人間社会の常識も教えれば理解はするものの、なぜ人間はこう面倒なのか、そこを納得するには至らないようです。


---万能なるアウラ---

 このレジェンディアの全ての生きとし生けるものが持つ生命のエネルギー……それは現在では、"アウラ"と呼ばれています。
 生物とそうでない物体を分ける境目とも言える、生きている者の肉体を循環し、激しい生命活動によって消費され、しかし自然回復していくエネルギー。それがアウラです。
 普通に生物が活動しているだけでも消費されていくアウラですが、心身を鍛え上げた者は、いつしか自分の体を自在に扱えるようになるうちに、自分の体を巡るアウラの流れを掴む事もできるようになります。事実、アウラという概念が発見される以前からも、そのエネルギーの流れを掴み、操り、超常的な力を操る者は少なからず存在していました。
 今日においては、自分の精神世界に構築した理論という名の鋳型にアウラを注ぎ込み、それを炎や癒しの力などに変えて物質世界に顕現させる事をして、"魔法"や"魔術"などと呼んでいます。こういった理論に頼らずとも我流でアウラを使いこなす者や、意志の力でアウラを操る者も少なからず存在していますが、真面目に勉強すれば誰しもアウラを扱えるようになる手段として、魔術の存在が広く知れ渡っています。



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