|
狂風烈伝マッドネス 作:仙石入道氏 |
|
今よりもほんの少し先の世界。
世界は未曾有の危機に晒されていた。 宇宙からの侵略者、「ドネルケバブ」との戦争である。
それはいわば探査衛星のようなもの。 半永久的に稼動する機械人間、司令官ハバネロと副官ペーニョに 率いられた数百を超える無人戦闘機「畸形機」達に プログラムされた命令は一つ。
流れ着いた星々を攻め滅ぼし、 ドネルケバブ人の住みやすい環境にテラフォーマットした上で 本星に連絡を入れること――。
かくして地球に辿り着いたハバネロとペーニョは その大本命令に従って侵略を開始したのである。
疲れを知らぬ無人畸形機の襲撃は昼夜を問わず続き、 地球人類は滅びに瀕していた。
地球の兵器が通じぬわけではない。 ミサイルが当たれば畸形機は破壊できた。 しかし敵は余りに数が多く、そして容赦が無かった。
某国秘密機関。 ドネルケバブの脅威に対抗する為、 ある一つの秘密計画が進行していた。
その最新ギガーマン(GIGARMAN――巨級人型兵器)は、 人間の持つエネルギーを吸い上げて稼動する戦闘兵器。
彼らは侵略者と戦うため、新造戦艦に 新型ギガーマンの支援型戦闘機と戦車を乗せた、 遊撃部隊を編成する。
その名も「レジアース」。
国籍を問わず有能な人材を募り、集まった精鋭たち。 だがそこに何故か一人の精薄男性が混じっていた。
シド=エド。彼は重度の精神障害者として 施設に隔離されていた身であったが、 レジアースの隊長にして、戦艦サイズの艦長バロウズの独断で レジアースに迎えられたのである。
「何故?」訝しがる隊員らを前にしてバロウズは宣言する。 「彼は新型機のパイロットだ」。
人間の持つエネルギーとは、電波――すなわち狂人の想念であった。
初陣、シドは圧倒的な戦果を上げた。 ギガーマンが起動したとき、シドはロボットの内燃機関となり、 パイロットとなる。皮肉なことにその間だけ、シドは理性を快復し、 厚い電波の膜の下に隠された死神的操縦技術を発揮したのである。
敵を千切っては投げ、千切っては投げたかと思えば、 内蔵武器のドラムスティックで叩き、潰し、打ち壊した。
その原始的な戦闘光景――。 誰ともなく呟いた「マッドネス」。 それはそのまま新型機の名となった。
クレコ=ワカバヤシはレジアースの隊員の メンタルケアのため乗船していた若き精神科の女性医師。
マッドネス支援戦闘機「アルバトロス」のパイロット、 ヒナト=オートリーとは旧知の仲であったが、 クールな彼女はヒナトのアプローチをつれなくかわしていた。
ある時、彼女はバロウズの民間人を弾除けにする非道な手段に怒り、 畸形機の進路を迂回させるべく独断で出撃し窮地に立たされる。 救ったのはヒナトのアルバトロスではなくマッドネス。 これまで彼女が蔑み、辛くあたってきたシドであった。
これを機にクレコはシドへの認識を改め、 シドという人間に惹かれていく。そうなってはじめて、 彼女はマッドネスという機体が内包する疑惑に気づく。
ドネルケバブの侵略と呼応するかたちとなったマッドネスの存在。 そんなにも早く対抗手段が用意できる筈もなかったのだ。
彼女がマッドネス計画の核心に踏み込もうとしている事を察知した バロウズは戦いに乗じて彼女を亡き者にせんと企むがシド、 そしてヒナトの活躍でことごとくピンチを逃れる。
しかし思いもよらぬところから彼ら、レジアースは 最大の苦難に立たされる。 ――シドの病状が薄れてきたのだ。
マッドネスに乗っていないにもかかわらず理性が露出し始めるシド。 クレコやヒナトは喜び、バロウズは愕然とした。
それは当初、ただ単に好き嫌いの違いでしかないと思われた。 だがそうではない。
侵略者を退けることにかけてバロウズは忠実な軍人であり、 ヒナトと立場は変わらなかった。
彼には分かっていたのだ。 シドがまともになる事は、マッドネスが使い物にならなくなる事と イコールであると。
折り悪く、ドネルケバブ司令官ハバネロは 自軍に損害を与え続けるマッドネス打倒のため、 彼専用にして最強の畸形機、三月兎の スキゾイドを駆ってサイズを襲撃した。
迎撃するマッドネスだったが、出力の低下と最強畸形機の前に 初の敗北を喫してしまう。
深刻なダメージを負ったマッドネスは、以降連戦連敗、 守るべき人々を守れないまま、サイズは遊撃ではなく 敗走の旅を強いられてしまう。
肉体的怪我から回復したシドに対し、 バロウズは投薬による気違い拍車を提案する。 クレコやヒナトは当然反対の立場を取り、 艦内は意見を二分し内ゲバ騒動へと発展する。
ところがシド本人はこれを知るや、 進んで気違い薬の投与を申し出てしまう。
復活のマッドネスが獅子奮迅の活躍を見せ、 スキゾイドへのリベンジを果たす陰で、 失意のクレコはサイズを降りる。
再びレジアースは勝ち続け、ドネルケバブを蹴散らし続けた。 威力と範囲のアップしたマッドネスの必殺技 「プリミティヴ・インパクト」の前に、 畸形機は脆くも崩れ去っていく。
遂に地球からドネルケバブの機影が消え去り、 サイズは月の裏側の本丸、ドネルケバブのドネルシップへと迫る。
その頃、地球ではクレコがマッドネス計画の全貌と直面していた。
その国が地球の覇権を握る為に開発していたマッドネスと、 そのために狂わされた元軍人、シドの過去と……。
肉体と精神をすり減らし、シドはハバネロのスキゾイドと刃を交える。 ハバネロもまた、マッドネスへのリベンジの為、 この一戦に全てを賭けていた。
反応速度、出力、全てが前回とはケタ違いのスキゾイドに 仲間は次々と撃墜され、マッドネスもまた、追い詰められる。
機体をクレーターに叩きつけられ、コクピットの中で 体勢を崩したシドは本来、伸ばすことのないボタンを押す。
――と、流れてきたのはクレコの言葉。 彼女が艦を降りて以降、欠けたままだったシドの心は埋まり、 捨て身の一撃がスキゾイドを討ち破る。
ドネルケバブ侵略軍は壊滅し、穏健派との停戦条約が結ばれ、 地球に平和が戻った。
地球を救った英雄として歓迎を受けたバロウズが、 かつて自分が捨て駒として切り捨てた男から 笑顔の銃弾を受け式典のさなか、 人生絶頂の瞬間に文字どおり昇天した半年後、 シャトルで月へ着陸したクレコとヒナトの夫婦は マッドネスの残骸の中からシドの遺体を回収する。
非道な兵器がゆえに、地球を救った事実を抹殺され、 闇に葬られた英雄を、母なる星へと帰還させるために。 |
|
辞典登録データDL |
|
主要登場人物 |
 |
シド=エド |
重度の精神障害者として隔離されていたが、 適性を認められマッドネスのパイロットに選ばれる。
マッドネス操縦時のみ理性を快復し 優れた操縦技術を発揮する。
経歴は抹消されていたが、クレコの追跡調査の結果、 元軍人でマッドネス計画の為 人為的に狂わされたことが判明した。
その本質は自己犠牲で、 大切なものを守る為には命を厭わない。 それだけに自分の力が及ばなかった時には 激しく自身を責める傾向にあった。 |
 |
クレコ= ワカバヤシ |
シドを乗船させるに当たり雇用した精神科医。
オートリーの友人であり、 彼の推薦があったと思われる。
当初はシドを蔑み、冷淡に接していたが、 命を救われたことを機に認識を改めていく。
長い黒髪も鮮やかなスマート美人。 シドが精神を病むきっかけとなる事件を 追っていくうちに、彼女はマッドネス計画が 仕組まれたものであることに気付くのだが、 その時、シドは既に月の裏側で 最後の戦いに挑んでいた。 |
 |
バロウズ= ウィルソン |
対ドネルケバブ用遊撃戦艦サイズの 艦長を任された優秀な軍人。
名門の家系を誇り、他者に対して優越感を隠さない。
シドを駒として使役し、彼の挙げた戦果を 全て自分の物としたが、その冷徹な戦術は 常に正解を導き出すため、部下の信頼は篤い。
マッドネス計画に深く関与し、それが為に 隠蔽をせんと月の裏側の決戦終結時、 クレコの嘆願を省みずシドをその場に 置き去りにし地球へ帰還した。
地球を救った英雄として凱旋した 彼を待ち受けていたのは、かつて自分が切り捨てた 部下による報復の銃弾だった。 |
 |
ハバネロ |
侵略宇宙人「ドネルケバブ」の宇宙侵略部隊司令官。
機械人間であり、好戦的な人格がセットされている。
居住可能惑星の支配生物の殲滅を至上とし、 その達成の為無人UFO、畸形機獣を地球に送り込む。
専用畸形機「スキゾイド」のパイロットでもあり、 地球で、そして月の裏側でマッドネスと 何度も交戦することになる。
本質は司令官ではなく戦士。 |
 |
ペーニョ |
侵略宇宙人「ドネルケバブ」の 宇宙侵略部隊副司令官。
ハバネロと同様に機械人間であり、 ハバネロの行動がオーバーな場合は ストップを掛ける役目を与えられている。
ハバネロがスキゾイドで出撃した場合は 彼が母船の艦長となる。
戦況を読み、不利と見るや 撤退に些かの躊躇もしない。 |
|
主要登場機体 |
|

|
マッドネス |
人間の妄想を原動力とする人型ロボット。
両手に握るタイコのバチを模したスティックを 武器とした格闘戦が主体で、ロボットとしては ありえないほどの荒々しい(気違いじみた) 動きを可能とする。
最大の必殺技は腹部のタイコを 打ち鳴らす事による破壊振動波放出攻撃 プリミティヴ・インパクト。 |
|

|
アルバトロス |
阿呆鳥の名を冠する万能戦闘機。
機動力を活かした一撃離脱を得意とし、 修理機能も持つ。 |
|

|
ギガロックス |
陸に地中に、自在の移動を 可能とするドリル戦車。
頑丈な装甲とドリルの力による ごり押しを得意とし、補給機能を持つ。 |
|

|
サイズ |
対ドネルケバブ用遊撃戦艦。
空中どころか宇宙へも進出可能。
格納に比重が置かれている為、 武装は多くない。 |
|

|
スキゾイド |
ハバネロの乗る最強畸形機。 |